作品 2026.08.03

「あの時の空」と、「水平線」

ずっと出したい色が、ひとつありました。

いつだったか見た夕焼けの空。
ほんとうに、ピンクだったんです。

あの時の空 お茶碗

「あの時の空」という名前をつけました。

この釉薬、今回で5回目の調合です。

うまくいったのは、そのうち3回。

前回はまったくいい色が出ませんでした。

思っていたのと、ちがう
これじゃない

調合をやり直して、また窯に入れて、
また丸一日待って。

今回、ぎりぎりのところで出てくれました。

夕焼けの釉薬の質感

ただ、うまくいった3回も、
ならべてみると全部微妙に色がちがいます。

もう少し赤に寄った回
灰色がつよく出た回

今回のは、ピンクのなかにほんのり灰色が混ざって、
日が沈みきる少し前の、あの空の感じ。

この釉薬には、天然の灰を使っています。

灰は、そのままでは使えません。
水に何度もさらして、あくを抜いて、
沈んだものだけを乾かして使います。
水簸(すいひ)といいます。

もとになった木も、燃やし方も、あくの抜け具合も、
そのたびに少しずつちがう。

紙の上では同じ配合でも、
同じ色にはならない。

だからこのお茶碗の色は、
今回できた分だけの色です。

ふちのところにだけ、
釉薬がすうっと薄くなって
あたたかい色が出ています。

夕焼けの色の平茶碗

こちらは平たいかたち。
高台のところに青がのぞいています。


そして、同じ窯からもうひとつ。

水平線 お茶碗

うみと 波しぶきと そら
「水平線」という名前です。

波しぶきのお茶碗

こちらは、波しぶきが上がってるところ。

波しぶきの釉薬のアップ

釉薬が流れて、重なって、
しぶきの粒みたい。

こうなってほしいとは思っていたけれど
私の力では及ばない
土と釉薬と窯がみせてくれる景色

ひとつの窯から、
「あの時の空」と、「水平線」。

やり直してよかったな、と
ちょっと嬉しい窯出しの日でした。


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